離婚も原則的には結婚と同様に「双方の同意」が必要です。
しかし、民法で定める「婚姻を継続し難い重大な事由」が認められれば、一方の訴えのみで離婚を成立させる事可能。
…とは言っても、なるべくなら円満離婚で済ませたいものです。
離婚の際にトラブルになる事例の多くは「相手が納得していないため、話し合いが進まない」事が原因。
時には「条件を飲んだら負け」と言わんばかりに感情的になって話し合いができない人も…。
離婚を考えている相手に気遣いをする…というのもちょっと変な話ですが、その不安要素をひとつひとつ解消していってあげるのも離婚交渉を円滑に進めるポイントと言えるでしょう。
では、そのような場合、どのように相手を納得させればよいのでしょうか?
実例を交えながら解説していきます。
妻が離婚してくれません!実態レポ
この事例では、夫の離婚の申し出に対し、妻が最後まで納得をしなかったケースを紹介します。
大まかな内容は
・夫(40歳/会社員) 妻(32歳/介護職) 子供2人
・離婚を考えたきっかけは妻の不倫。物的証拠は無いが状況証拠は揃っている。
・疑いが晴れず気持ちが向かない。自分の将来や子供の事を考えると一緒にいる理由が無い。
結論としては、妻は「夜勤」と偽り、会社の同僚と数回の不貞行為を行っていました。
しかし、妻側に離婚をする考えは無く、ちょっとした遊びの延長のつもりだったようです。
不倫期間も短く回数も少ない上に常習性もなかったため、決定的な物的証拠の入手はできませんでしたが、客観的にみて「限りなく黒に近いグレー」な状況。
社内でも噂話になっていた上に、妻自身のSNSにもたびたび不倫相手と思わしき相手と会っていた事を連想させる投稿も…。
状況証拠は十分に揃っていたと言えました。
この妻が離婚に同意しなかった理由はどこにあるのでしょうか?
(1)物的証拠がないため、争えば勝てると思っていた
配偶者の不貞行為を理由に婚姻関係を解消する場合、物的証拠が必ず必要になってきます。
その多くは、興信所などの専門家に依頼をして
・ラブホテル等に出入りした事が確認できる証拠写真
・特定の相手と頻繁に会っていた裏付けになるクレジットカードの利用履歴
などを集める方法が一般的です。
しかし、このケースの場合、不倫期間が短く密会の回数が少なかったため、専門家でも決定的な証拠の入手には至りませんでした。
妻と不倫相手も「証拠不十分なら知らぬ存ぜぬで通せば逃げ切れる」と確信し、口裏を合わせていたようです。
さらに、妻側は「夫婦関係が破綻していたわけではない」と主張。
不倫相手も、仕事場では相談しにくい話を聞いてもらっていただけで他意はない…とし「疑われるような行為をした事だけは申し訳ない」と口先だけの謝罪を繰り返すだけ。
不倫関係も常習性がなかったこともあり「そこまで目くじらを立てる話でもないだろう…。」と軽く考えていた節もあったようです。
(2)小さな子どもがいた/シングルマザーになる自信がなかった
この当時、子どもはまだ5歳と3歳。
不貞行為をした妻の立場としては、離婚に伴い親権を取られる心配もありましたが、逆に親権を得たとしても独りで子育てをしながら生活をする自信はありませんでした。
まだまだ手のかかる2人の子どもの事を考えると、養育費を貰ったとしても経済的な負担が増える事は間違いありません。
また、離婚に伴う苗字の変更や付随する手続き、新生活の準備等を考えると、多少の夫婦関係の悪化があったとしても、我慢をした方が得策と判断したようです。
女性の場合、離婚を受け入れない大きな理由は経済的な問題です。
特にこの場合、有責配偶者は妻になるため、慰謝料の請求は夫から妻に対して行われます。
現実問題として女性は男性に比べ所得が低い事が多く、財産分与分から支払いをすることが多いです。
(そのため、離婚後は生活費の捻出がやっと…という例も少なくありません)
離婚後の厳しい生活をイメージするだけで恐怖を覚え、頑として離婚を受け入れるわけにはいかない!と態度を硬くする人がいるのも想像に難しくない話でしょう。