調停離婚に至った理由とは
Aさん(37歳/専業主婦/結婚10年)は、同年齢の元夫の不貞行為と違法行為が理由で離婚を決意しました。
しかし、当事者同士の話し合いだけでは解決せず、調停離婚をする事に。
では、その経緯を振り返ってみましょう。
(1)元夫の社内不倫と業務上横領が発覚
きっかけは元夫が会社経費の不正使用が発覚したことでした。
いわゆる「カラ出張」や「カラ接待」を繰り返し、不倫相手とのデート費用に会社経費を流用していたことが判明。
しかも、上司である立場を悪用して複数回に及び部下の女性と不適切な関係を持っただけでなく、男性の部下にも口裏あわせを強要していました。
(ちなみにAさんとの結婚のきっかけも当時同僚だった元夫との社内恋愛…というより、いわゆるデキ婚だったそうです。)
会社側もこの一連の行為を重く見て、懲戒解雇処分を言い渡す事に。
話し合いの結果、起訴は取り下げる温情処分のおかげで逮捕されることはありませんでしたが、それでも重い処分には変わりありませんでした。
妻のAさんとしては、夫の解雇理由もショックでしたが、再就職が難しい現実問題にも直面します。
両親も「不倫だけでなく犯罪行為をするような男と暮らす必要はないし、孫の面倒は実家でも見れる」と離婚を推奨。
実際、世間体も非常に悪く、近所の噂話は不倫と横領でもちきりになり、Aさんは逃げるように子供を連れて実家へ。
後日、夫に離婚届を郵送して、この件を終わらせようとしました。
(2)夫が突きつけた離婚の条件
この件では明らかに有責配偶者は夫であり、無条件で離婚が成立する…と考えていましたが、思わぬ展開になります。
予想もしなかったことに「夫が離婚協議を拒否する」と言いだしてきたのです。
自分が悪いのに何様のつもり!?と一瞬、パニックになり、その場では話合いにならず…。
さらに後日になって、離婚届が返送される…という事がありました。
夫の主張としては
・一方的な離婚請求なので応じられない。話合いの場を設けるべき。
・有責配偶者である自覚はある。しかし、夫婦関係が破綻するほどの内容かどうか疑問である。
・もし一方的に離婚を主張し続けるのであれば、慰謝料も養育費も払う意思はなく親権も主張する。
…というもの。
一見すると、間違った事を言ってはいないように見えますが…。
これを横で見ていたAさんの両親は「二人で話し合っても解決はしないし、余計な時間と手間がかかる。
何よりAさん自身の身に危険が及ぶ心配がある」として弁護士に依頼しました。
1回目の話し合いの席からAさん本人は出席せず代理人に依頼。(この時点では弁護士事務所での話合い)
これを不服とした夫は話合いの無効を訴え、離婚協議に応じず途中退席をしました。
そこで、弁護士は早急に離婚調停の手続きを進め、夫に対して強制力のある対処をしました。
呼び出し状を受け取った夫としても、これを無視するわけにはいきません。
(無視をし続けた場合、夫の主張が一切聞き入れられず、Aさん側の言い分が100%認められる事になるため)
こうして、半強制的に夫を離婚調停の席に着かせる事になりました。
「え、そこでそれいう?」調停中あったパートナーのKYエピソード
調停の場は、申立人と相手方の双方から主張を聞く場なので、原則として双方を平等に扱います。
この件では、夫が有責配偶者ですが、一応の言い分を発言する機会を与えられる事になります。
ここで夫の主張が一部でも認められれば、慰謝料等の取り決めに関して、夫に有利な話が出てくる可能性もあります。
では、この席で夫は何を主張したのでしょうか?
(1)「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を主張
この夫は調停の席で
・妻とはセックスレスだった→だから他の女性と関係を持った
・収入は妻が全て管理しており、必要最低限の小遣いもなかった→だから魔が差して横領をした
・夫婦関係は不倫をしていた時には既に破綻しており、事実上、離婚状態だった→だから、自分が一方的に悪いわけではない
として「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」を主張。
有責配偶者である事を認めながらも、決して100%では無い!という姿勢でした。
これが当人同士の話合いの場合、夫の勢いや今までの関係性から来る情に流されて…という事もありますが、そこは百戦錬磨の離婚専門弁護士。
夫の狙いが慰謝料の減額と養育費支払い免除だと見抜きます。
さらに、懲戒解雇を受け再就職が難しい現実も考慮。
Aさんと事前に相談をしておいた相場よりも破格に安い慰謝料を提示する事で、早期解決を狙いました。
この提示に対し、夫の方は「自分の主張が通った!」と勘違い。
調子に乗って、妻との性生活の不満や、不倫相手との満ち足りた性生活の詳細を語り始め…。
調停委員もさすがに困惑し、その場の雰囲気は最悪だったそうです。
(もちろん、夫は信頼だけでなく心証も地に落ち、全面的にAさん側の主張が認められる形になりました。)
(2)弁護士に依頼する最大のメリットは「スピード」
調停の期間や回数はケースバイケースなので一概には言えませんが、平均すると5〜6回、期間は1年〜1年半というのが目安になります。
しかし、弁護士が介入すると平均回数が2〜3回、期間も半年程度に抑えられる事が多いです。
離婚調停は平日の昼間にしか行われず、その度に家庭裁判所に出向くことになります。
ただでさえ余計な負担を背負わされているのに、不毛な話し合いのために貴重な時間を割かれるのは馬鹿馬鹿しい話。
しかも、女性側は離婚調停中はもちろん、離婚後半年は「再婚禁止期間」があるため、調停が長引けば長引くほど再婚のチャンスを失うことになります。
(長引いた例では3年近くかかった事例も。この場合、Aさんの再婚可能な年齢は40歳になるた
め、再婚のチャンスが低くなります)
そう考えると、多少の費用はかかってもスピード解決を希望するなら弁護士に依頼をするメリットはあるでしょう。
不貞行為だけでなく犯罪行為をした配偶者に対し「許せない!」と熱くなりすぎた気持ちも諌めてくれるので、現実的かつ最速で合理的な対処法を教えてくれます。
この場合も、調停は2回で決着し、期間も1ヶ月半で離婚が成立しました。
慰謝料や養育費に関しても「無い袖は振れぬ」ということで、夫婦の共有財産を放棄させることで決着。
慰謝料の相場には足りない額ではありましたが、夫が大切にしていた趣味の車を二足三文で売り払い、せめてもの仕返し…としたようです。
余談ですが、この時になってやっと夫は謝罪の言葉を口にしながら泣き崩れていたそうです。
自分の犯した罪の深さを自覚した…というより、大切にしていたオモチャを勝手に捨てられて
半狂乱になった子供のような印象だった…と、手続きをした弁護士さんが漏らしていました。
最後の最後まで空気が読めない人は実在するようです…。