離婚時に公正証書を作成する理由
離婚の際に、夫婦で話し合って決めた内容も、きちんと守られていなければ意味はありません。
口約束だけだとどうしても曖昧になってしまったり、生活環境の変化を理由に離婚調停の際に取り決めた内容を一方的に変更されてしまう事があります。
このような離婚後のトラブルを避けるために作成する書類が「離婚公正証書」です。
(1)公正証書とは?
公正証書は法的な拘束力を持つ書類です。
万一、取り決めた内容に不履行があれば、裁判所での面倒な手続きをする事なく、相手に対して法的な拘束力を持って対応できます。
作成を希望する場合、まずは公証役場に行き、必要な手続きや用意する書類について説明を受けると良いでしょう。
解説サイトを見ていると、時々、誤った情報が記載されている事があるので、自分で勝手な判断をせず、専門家にチェックしてもらう事を強くオススメします。
この時に注意が必要になる点が3つ。
1:公正証書は双方の同意がないと作成できない。
2:法的に無効な内容は記載できない。
3:作成するために1〜2週間ほど時間がかかる。
公正証書は「双方の同意をもって作成する」事が原則になるため、一方的な訴えを記載することはできません。
その際に、法的に無効と判断される内容の記載もNG(例:養育費の支払い/子供との面会拒否、契約不履行の際に殺されても文句を言わない…等の公序良俗に反する内容)
公正証書のテンプレートはネットで簡単に入手できますが、公証人が正規の書類を作成するまで強制力は発生しません。
手続きには時間がかかるため、離婚を決めているのであれば余裕を持った予定を組む必要があります。
この時に、よく混同される話で「離婚調停調書」があります。
これは公正証書とは異なり、家庭裁判所で「離婚調停」が行われた際に発行されるもの。
公正証書:当事者同士の話し合いで決まるもの
離婚調停調書:離婚調停の結果、裁判官(または家事調停官)の判断で決まるもの
の違いがあります。
(2)作成するタイミングや費用
公正証書は作成するタイミングも重要になります。
離婚成立後でも作成は可能ですが、トラブルを未然に防ぐためにも、離婚届を提出する前に作成しておくことがベストです。
離婚成立を急ぐあまり細かい取り決めを疎かにすると、後で言った/言わない…と水掛け論になる事も。
離婚が成立してしまうと相手も面倒な話を避け、無責任な行動に出る事も十分に考えられます。
特に、慰謝料や財産分与に関しては、離婚後に一定期間(規定では2年)経過すると、原則として請求権が認められなくなります。
仮に訴えが認められたとしても、面倒な手続きと余計な時間がかかることはさけられません。
事前に公正証書を作るだけでそのリスクが回避できると思えば、多少手間と費用がかかったとしても作成はしておくべきです。
費用に関しては、慰謝料や養育費の総額によって変わります。
書面総額が100万円以下なら公正証書の作成手数料は5000円。
3000万円以上5000万円以下の高額な内容でも29000円なので、一般的には10000円〜20000円を目安にするとよいでしょう。
公正証書の作成を専門家に依頼すると、代行費用として50000円〜80000円が別途必要になります。
公正証書は当事者夫婦が揃って公正役場に出向くことが原則ですが
・平日の日中に揃って時間が取れない
・子供が小さい上に預ける所もない
・知識もなく面倒な話は専門家に依頼したい
という人は、行政書士や弁護士を利用すると良いでしょう。